ベトナムの銀行は、預金金利が高いと言われていますが本当にそうなのか、日本人から見て言われるほどお得なのか、なぜその金利水準になっているのか?
検索しても日本語ではほとんど情報が無い中、ホーチミンにある計47のローカル銀行・外資系銀行の預金金利を調べて比較し、そこから見えてくるものについて考えてみました。

ベトナムにおける銀行の種類

ベトナムには、1986年のドイモイ政策の後、4つの国営商業銀行が設立され、1990年代から民間商業銀行や合弁銀行、外資系銀行などが次々と設立されていきました。

銀行の数は増えたもののベトナム国内で圧倒的なシェアを誇るのは、4つの大手国営銀行でその預金と貸し出しのシェアは、4年前の2013年時点でも約45%と言われております。また世界の銀行ブランド力調査トップ500(The World’s Most Valuable Banking Brands2017)において、Vietcom Bank(外商銀行)、Vietin Bank(工商銀行)、BIDV(投資開発銀行)の大手国営銀行3行がランクインするなど世界的にも存在感を高めています。

一方、民間商業銀行は金利も含めたサービスの差別化で収益を伸ばしていますが、不良債権の処理が終わっていない銀行も多く(これは国営銀行も同じ)、一部銀行は強制国有化されたり、合併を促されるなど再編の渦中にあります。ベトナムの預金保護の記事参照


外資系銀行は、主に母国から進出してきた企業や個人向けのサービスが主軸ですが、CitiBankやHSBCなどは現地の富裕層、中間層を狙って金融サービスを提供したり、Shinhan Bank (親韓銀行)は、ベトナム国内に外資系最多の17支店を出してベトナム人の取り込みに力を注ぐなど、ベトナムの金融サービスに新しい風を吹き込んでいます。

ベトナムの定期預金金利ランキング2017年2月版

2017年2月中旬時点におけるベトナムの銀行47行で、個人向けのベトナムドン建て定期預金金利(単位は%)を掲載しています。掲載は、3ヶ月の定期預金金利が低い順です。

銀行名 3ヶ月 6ヶ月 1年 2年 3年 備考
Citi Bank 0.40 0.60 1.10 世界的な超大手銀行
HSBC Bank(香港上海銀行) 1.60 2.10 3.00 2.85 3.00 世界的な超大手銀行
ANZ Vietnam 2.30 2.50 2.80 2.80 外資(オーストラリア)
Commonwealth Bank 2.40 2.75 3.25 外資(オーストラリア)
Bank of China(中国銀行) 2.50 3.50 6.00 世界的な大手(中国)
Satandard Charted Bank 2.70 3.00 3.30 4.30 4.70 世界的な大手(英国)
ベトナム国債 3.96 4.36 4.69 ベトナム政府の保証
Shinhan Bank (親韓銀行) 4.70 5.20 6.10 6.20 6.30 外資系(韓国)
Hong Leong Bank 4.80 5.20 5.50 5.80 5.80 外資系(マレーシア)
PUBLIC BANK VIETNAM 4.80 5.20 6.40 6.50 6.50 外資系(マレーシア)
Agri Bank(農業銀行) 4.80 5.30 6.50 6.80 大手国営(預金額最大)
Vietcom Bank(外商銀行) 4.80 5.30 6.50 6.50 6.50 大手国営(みずほ出資)
Vietin Bank(工商銀行) 4.80 5.30 6.80 6.80 7.00 大手国営(MUFJ出資)
BIDV(投資開発銀行) 4.80 5.30 6.90 6.80 6.80 大手国営(地銀と提携)
Military Bank 4.90 5.40 7.20 7.50 7.00 大手民間(軍隊系)
LienVietPost Bank 5.00 5.50 6.80 7.20 7.40 ベトナムの郵便貯金
ACB Bank 5.00 5.60 6.20 6.50 6.70 大手民間
TECHOM Bank 5.00 5.70 6.50 6.80 7.10 大手民間(HSBC出資)
EXIM Bank 5.20 5.80 6.40 7.90 7.90 大手民間(SMBC出資)
HD Bank 5.20 5.90 7.00 6.90 6.90 大手民間(地銀と提携)
SeA Bank 5.25 5.80 6.80 6.90 6.95
VIB Bank 5.30 5.70 7.15 7.15 7.15
AB Bank 5.30 6.00 7.00 7.00 7.00
VIETNAM RUSSIA Bank 5.30 6.10 6.90 7.30 7.30
VP Bank 5.30 6.30 6.90 7.30 7.40
Sacom Bank 5.40 6.00 6.80 7.00 7.00 強制再編予定?
KIENLONG Bank 5.40 6.50 7.10 7.00 7.00
NAM A Bank 5.40 6.60 7.00 7.40 7.40
VIET A Bank 5.40 6.70 7.40 7.70 7.70
Viet Capital Bank 5.40 7.00 7.40 7.20 7.20
GP Bank 5.45 6.20 7.00 7.00 7.00 破綻?-強制国有化済
MARITIME Bank 5.45 6.50 7.00 7.00 7.00
Vietnam Construction Bank 5.45 6.55 7.20 7.30 7.30 破綻?-強制国有化済
Saigon Bank 5.50 5.90 6.80 7.10
INDOVINA Bank 5.50 6.00 7.20 7.60 7.60
Ocean Bank 5.50 6.20 7.00 7.30 7.40 破綻?-強制国有化済
TP Bank 5.50 6.20 7.10 7.15 7.45 SBIグループ出資
SHB(Saigon Hanoi Bank) 5.50 6.30 6.90 7.10 7.10
OCB Bank 5.50 6.50 7.20 7.50 7.60
PV com Bank 5.50 6.50 7.50 7.70 7.70
PG Bank 5.50 6.60 7.10 7.30 7.30
Dong A Bank 5.50 6.70 7.20 7.50 7.50 強制再編予定?
BAC A Bank 5.50 6.90 7.40 7.65 7.65
Viet Bank 5.50 7.00 7.20 7.80 7.90
National Citizen Bank 5.50 7.00 7.30 8.00 7.50
BAOVIET Bank 5.50 7.00 7.60 7.60 7.60
Saigon Commercial Bank 5.50 7.15 7.60 7.95 7.95

外資系銀行などでWEBに預金金利を載せていない銀行は、上記に含まれません。ネット専用の金利がある場合はそれを優先してます。店舗などで独自の金利を付けているものは反映していません。


(こんな名前の銀行も。バクアと発音?)

一部の外資銀行を除くとベトナムでは、
・3ヶ月定期で4.7~5.5%
・6ヶ月定期で5.2~7.15%
・1年定期で6.1~7.6%
・2年定期で6.2~8.0%
・3年定期で6.3~7.95%
くらいの預金金利をつけていることがわかります。また上記には入れていませんが100億ドン(約5,000万円)など高額預金者向けの特別金利もあり、2年で8.2%などさらに高い金利もあります。

以上を見ると名目上は高金利であることがわかります。では、この数値をよく見ていく事で、いったい何が見えてくるのでしょうか?

預金金利比較から見えてくるベトナムの銀行事情

一般的に信用力の高い金融機関は、低い金利で預金を集めることができ、信用力が劣る金融機関は、高い金利を提示しないと預金が集まらないはずです。その観点から上記金利を比較して見ると全体的な傾向として

世界的な大手銀行/先進国の外資系銀行 > ベトナム政府 > 新興国の外資系銀行 > ベトナム国営大手銀行 > ベトナム民間大手銀行 > ベトナム中堅/小規模銀行

の順で信用力のあることがわかります。(プロモーション金利などもあって、単純に金利だけでは比べられませんが1つの目安にはなります)

本来その国の中で一番信用力があるのは政府(ベトナム政府)のはずですが、グローバルに活動している大手金融機関は、ベトナム政府よりも低い金利でベトナムドンを調達できているため、ベトナム政府よりも信用力があるとベトナム人からも見られていると考えることもできそうです。
また理論上Citi BankやHSBCなどは、集めた預金をリスクを取って企業に貸し出さなくても、ベトナム国債を買っておくだけでほとんどリスク無しにサヤが抜けることになりますね。

一方、企業努力による高金利もあるので必ずしも危ない銀行という意味ではありませんが、外資や大手に比べて信用力の劣る銀行は、金利を高めに設定して預金を集めたり、既存の預金者を繋ぎとめている様子が伺えます。

ベトナムの預金金利は、お得な金利なのか?

ゼロ金利の日本からすれば、信じられないくらいの高金利となりますが、なぜこんな金利をつけているのか、ベトナムの環境から見て納得のいく金利なのかと考えることが金融リテラシーだと思いますのでいくつか理由を挙げてみます。

(1)ベトナムドンの価値を維持するため
ベトナムドンの預金金利は上記のような高金利ですがドル預金金利は、上限0%に規制されており金利差を広げることでベトナム国内において、ドルからベトナムドンへの両替を促しています。逆を返せばこのくらい金利差があってもなおベトナムドンの通貨安圧力が強い=ベトナム人から見て通貨への信用力が低いということになります。ベトナムドン闇レートの記事参照

(2)ベトナムへの投資(外貨)を呼び込むため
昨年アメリカの利上げによって新興国からの資金流出があったように、アメリカとの金利差が投資(外貨)を呼び込むための1つの材料になっています。インフレ率やベトナムの国自体の信用力、さらに個別のリスクまで加味したうえでベトナムがお得だと思ってもらうためには、アメリカの金利に相当プラスする必要があります。国際送金受け取り額減少の記事参照

(3)タンス預金を銀行に集めるため
これはベトナムで生活していないと見えてこない点ですが、ベトナム人の家には必ず金庫があるといわれるほど銀行ではなく各家々に大量のお金が眠っています。

これは・・・
A:表に出せないお金(税務申告をしていない収入)であるため
B:通貨や銀行に対するの信用力が低いので米ドルの現金や金(ゴールド)で保有しているため
C:親族間でのお金の貸し借りといった銀行を介さない取引が多いため(特に田舎では顕著)
D:(小額から不動産取引まで)銀行を介さない方が理由Aで相手も値引いてくれてお得だから
といった理由によるもので、これを金利を高くすることで市中に眠っているお金を銀行に誘導するという意図があると考えられます。

(4)インフレ率+信用リスクによりこの金利水準になるため
2017年のベトナム目標インフレ率は、中央銀行より4%以下を目指すと言われています。さらに個人の預金利息には5%の所得税源泉徴収が発生するため、それも併せて1年の定期預金を実質金利として計算してみる(金利に0.95をかけてインフレ率の予想を4%として差し引く)と、

・世界的な大手銀行:実質マイナス3%~1.7%
(中国銀行を除けば事実上すべてマイナス金利)
・ベトナム国債:実質0%
・新興国の外資系銀行:実質1.2~2.1%
・大手国営銀行:実質2.2~2.6%
・民間大手銀行:実質1.9~2.8%
・中堅/小規模銀行:実質2.5~3.2%

となります。1年後インフレ率が何%なのか(インフレにより通貨がどのくらい切り下がるのか)次第ではありますが4%の場合、世界的な大手銀行で実質マイナスなのは安心保管料を払ったと考えることになります。ベトナム国債ではインフレ分を実質的にヘッジできるだけとなるので、それ以上の実質(~3.2%)の金利は、ほぼ信用リスクを取って各銀行にお金を貸している対価と考えることもできそうです。

S&P社によるベトナムの自国通貨建てソブリン格付けは、2017年1月末時点で長期がBB-短期がB(アメリカは、長期AA+短期A-1+。参考までにあのギリシャが長期B-短期B。)であり、国がこのくらいなので、外資系を除いたベトナムの銀行信用力は、国際的にはもっと低いはずです。そういった銀行へ貸している対価=実質的な金利が妥当な水準なのかは各個人の判断次第ですが、ベトナムは世間で言われるほどリスク無しでお得な高金利国ではないというのが今回の結論になります。

観光客でも口座開設できますが注意点として

実際にいくつかの銀行に行って聞いてきたところ、就労ビザが無いベトナム非居住者(普段、日本に住んでいるビザ無し観光客)でも口座開設ができることがわかりましたが、下記を念頭に置かれることをお勧めしております。


(外資系銀行なら安心感があり英語は通じるが金利は低い)

・以前書いたようにベトナムの預金保護は25万円まで+暗黙の政府保証をどう考えるか
・現金で預け入れができない場合が多く、その場合日本から国際送金手数料がかかる
・日本円とベトナムドンの両替手数料が都合2回かかる
・ベトナムドン通貨切り下げ範囲をどう考えるか
・外資系以外は、英語が話せない銀行窓口担当者が非常に多い
・銀行や担当者によって言うことが違う(間違いもあって後から説明を反故されることも)
・トラブル時は、そういう担当者とやりとりしての自力解決が必要になる
・満期がきた預金は本当に外貨へ再両替してベトナム国外への送金できるのか?
・ハンドキャリーの場合、中央銀行の許可証が無いと1回5000ドルまでしか持ち出せない
・仮に預金保険適用となったとき英語で連絡&対応してもらえるか不明

などの理由から、高金利目当てにベトナムに来てまで預金する必要があるのかは、各個人の判断次第ですね。

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