オフショア開発には興味があっても、実際に現地法人を設立して進出するというところまで踏み出すのはそう簡単ではありません。若年層が圧倒的に多いという人口構成率や、安価で勤勉な人材、高くて安定した経済成長率などについてはよく聞くものの、「実際に進出するとどうなるの?」というようなところまで突っ込んだ情報はなかなかないようです。
そこで、今回は、2008年春、ベトナムに実際に進出した経験をもとに、「ベトナム進出」のドキュメントを書いてみたいと思います。

当社がベトナム進出を検討し始めたのは2007年でした。多くの他の開発会社同様、まずは「パイロット案件」をベトナムの日系オフショア会社に出してみることにしました。
スケジュール的に余裕がある、50万円程度の案件です。開発言語はPHPで、日本本社のウェブサイト制作にひも付いた開発です。先方の開発ご担当者の方はベトナム人の方でした。1ヶ月ほどの開発期間の中、日本語として時にやや不自然な表現などをメールに見ることがありましたが、基本的なコーディング等はほぼ問題はありませんでした。
その間、ベトナムに何度か視察していき、2007年の後半にベトナム進出を社内として正式決定し、日系のコンサルティング会社を通じ、まずは現地のオフィス選定とライセンス申請に入りました。
最初の難関は、オフィス探しでした。本社の総務担当が現地のコンサルティング会社のスタッフと連絡を取り、何度かホーチミン入りして探したのですが、なかなかいいオフィスを見つけることが出来ませんでした。
と言いますのも、私たちが事務所を探し始めた2007年末は、ベトナムの不動産バブルと言ってもいい時期の後半に当たり、なかなか安くていい物件を見つけることができなかったのです。なかには1平米あたり50ドルや70ドルといった物件もざらにありました。「これだけ高いと、日本と変わらないよな」と苦笑いをしながらオフィスを探していたことを思い出します。(現在では、家賃も下降傾向にあり、2007年当時よりは遥かに探しやすいと思います。)
ただ、ここは重要なところなのですが、ベトナムではオフィスを借りてからでないとライセンスを取得することが出来ません。(日本のように、本社所在地がアバウトであってはならないのです。)
そんなわけで、ライセンス取得を急いでいた私たちは、多くの物件を見て、2008年4月初めにようやく3区のPham Ngoc Thach通りにオフィスを見つけることが出来たのでした。
さて、いよいよオフィスを借りることができ、業務を開始することになりました。幸い、前の会社の内装の一部を安く引き取ることが出来ましたので、机や椅子を購入したり、会議室等を作る手間は大幅に省くことが出来ました。(ただし、前の会社の総務の方が交渉上手な方で、当社の値下げ要求になかなか応じてくれませんでした。)
次は、いよいよ、投資ライセンスの取得です。この投資ライセンスは、ベトナム国内における正式な営業許可であるのと同時に、
(1)Tax Codeと呼ばれる税務コードを取得すること
(2)スタッフの社会保険などを支払うため
(3)銀行口座を開設するため
などのために必須です。
当社は2007年末から申請しており、オフィスの住所が決まったことで、あとはすんなりとライセンスが取得できる見込みであると、日系のコンサルティング会社からは聞いていました。
4月中旬までには取得できると聞き、当社では採用活動などを前倒しで開始いたしました。
このあと、ライセンスがなかなか取れなかったのですが、この件については別の回に書かせていただきます。
採用活動は、現地の転職サイトと日系の紹介エージェントの2社を使いました。ここで感じたのは、やはりベトナムの圧倒的な人材供給力です。求人広告を1度出すと、1000を優に越える単位での応募があります。多くは経験2、3年目の日本で言うところの「第2新卒」レベルですが、会社を立ち上げてすぐにでも開発を始めたい当社にとっては本当に恵まれた条件でした。面接は英語が出来るスタッフは英語でもやりとりを行いましたが、基本的には先に採用していたベトナム人のマネージャと総務・人事のスタッフに任せ、私は「どうして、日系である当社に来たいのですか?」という質問をして、最後に給与を調整するにとどめました。応募者は、技術的にはばらつきがあるものの、総じてみんな非常に積極的です。私の「応募理由」に対する質問に対しては、「戦後の焼け跡から先進国に駆け上がった日本式の経営を学びたい」という応募者が多く、親日的だと言われるベトナムを肌で感じることが出来ます。最初のうちは、日系企業へ転職する時の「模範解答」として流布しているのか思ったのですが、採用したスタッフの日本語学習へのモチベーションの高さなどから、その思いが本当であることを知りました。
また、ベトナム人は勤勉で努力家であると言われますが、これもおおむね当たっていると思います。もちろん、世界中のどこでも同じであるように、人によって多少の違いはあると思いますが、少なくとも同年代の日本の若者よりは前向きで仕事に関して貪欲であるということは言えます。また、男女問わず、とにかく明るい人間が多く、一緒に働いていて本当に楽しい。
技術やビジネススキルのトレーニングは当然必要ですが、「このスタッフならどんな開発でもやっていける」と思えるメンバーを10名ほど(現在では40名ほどになっています)集めて、いよいよ開発に乗り出すことになりました。
目次
- 第1回 ベトナムオフショア開発事始め
- 第2回 オフショア開発、営業開始!
- 第3回 備えあれば憂いなし 開発計画の極意
- 第4回 従業員のやる気を引き出す人材育成術
- 第5回 今後のベトナムオフショア開発
