ベトナムではECの普及に伴って物流の重要性が高まっており、それを支える流通インフラ(高速道路)整備も関心が高まっています。しかし他国に比べてインフラ整備のスピードが遅いという状況にあるので調べてみると、ベトナム特有な原因が見えてきました。

1.短距離の国内陸送費用がベトナム国外への海上輸送費用よりも高い事情

5月20日のトイチェの記事ですが、ホーチミン~ブンタウ(Vung Tau )間の陸路120kmのコンテナ輸送費用は、シンガポールまでの海上コンテナ輸送費用よりも高いと報じられています。

ホーチミン7区のVict portからブンタウまでの陸路120kmの輸送においてコンテナ輸送費用は520万ドン(2.6万円)に対して、シンガポールまでの海上輸送費用は、貨物船にもよるそうですが100~200万ドン(5千~1万円)とかなり安い場合もあるようです。


上記はホーチミン近郊の地図で濃いオレンジ色の線が高速道路。距離も短く右下のブンタウへ行く場合は、途中までしか高速道路を使えない。

また北部においてもハイフォン港からハノイまたは近辺の会社までのコンテナ配送費用は5~600ドル(1,000~1,300万ドン、5.5~6.6万円)と高く、ある会社はハイフォンのQuang Chau港から中国まで海上輸送費300万ドン(1.5万円)に対して、ハイフォンからハノイまでの陸路輸送100kmで600万ドン(3万円)を払うことになったなど、短距離の陸送費用の方が長距離の海上輸送よりも高くなるという現象が起きています。

記事によると配送費用は全コストの6%で絶えず増加し続けており、行政が徴収するインフラ整備費を回収のための各種費用は、ベトナム企業の27%(おそらく物流や小売りなど)に対して15%超の利益を減少させるほどの影響を与えており、ベトナム経済への影響が大きいことがわかります。


上記はハノイ近郊の地図で濃いオレンジ色の線が高速道路。ハイフォンやニンビンへの高速道路があることがわかる

ちなみにホーチミン~ブンタウ間陸路運送費用520万ドン(2.6万円)の内訳としては、

・高速道路費用(Phu My, Long Thanh – Dau Giay間)120万ドン(6,000円)
・港内の配送費用 コンテナ一個につき10万ドン(500円)
・トラック運転手の給料70万ドン(3,500円)
・トラック燃料費120万ドン(6,000円)
・トラックの減価償却費も含む会社の粗利200万ドン(10,000円)

でありブンタウへの経路の半分にも満たない高速道路費用が、全輸送費用の23%を占めるなど高速道路利用料の高さが目を引きます。

2.なぜベトナムの高速道路料金が高いのか?

ハノイ~ハイフォン間の高速道路が1年半前に開通した時、コンテナ車の料金は84万VND(4,200円)と物価水準に比べて高く設定されていることがわかります。

ベトナムの高速道路料金が高く設定されているのには、
1kmあたりの建設費の高さ
その建設費のための借入金利の高さ
の2点に原因があるからです。この2つについてより深く調べてみました。

ベトナムでの報道によるとハノイ-ハイフォン間の高速道路を運営する会社は、営業収入が2015年の1,220億ドン(6.1億円)から2016年は1兆4300億ドン(71.5億円)へと大幅増加に増加したものの2016年決算において赤字額は、1日あたり約50億ドン(250万円)、1年間で1兆7560億ドン(87.8億円)もの損失となっています。

なぜ巨額損失を出しているのかと言えば支払利息にあり、2016年の決算では、資産は38兆7000億ドン(1,935億円)のうち資本金は3兆7000億ドン(185億円)でしかなく、90%超が負債といった状況です。

ベトナムのサービスエリア(道の駅?)

その負債の多くは、年利10.5~11.4%の30年ローンであり1年前に料金を値上げした結果収入が増えたものの、値上げした後の運賃収入が1日40億ドン(2,000万円)であることに対して、1日あたりの支払利息は80億ドン(4,000万円)と収入の2倍もの支払利息が発生しています。また1年前値上げしたこともあり直近での再値上げは破産しようとも困難と、運営する会社の担当者がメディアに対して語っています。

ハノイ~ハイフォン間の高速道路の建設は、2008年5月にプロジェクトが始まり総投資額45兆5000億ドン(2,275億円)で計105kmが完成しましたが、4車線道路の部分は1kmあたり1,080万ドルもかかったとあります。では、この建設費用自体は、国際的に比較してみて妥当な金額なのでしょうか?

3.ベトナムの高速道路は、他国に比べて2倍の費用が掛かっている?

別の記事で高速道路建設費用は、北部や南部のメコンデルタで1kmあたり740万ドル、内陸部では1kmあたり1,720万ドルの建設費がかかっていると報じられていますが他の国と比較してみると

・ドイツの場合1kmあたり1,090万ドル
・ポルトガルの場合1kmあたり1,210万ドル
・ハンガリーの場合1kmあたり1,330万ドル
・オーストリアの場合1kmあたり1,670万ドル
・アメリカの場合1kmあたり1,280~4,080万ドル
・中国の場合1kmあたり1,050~1,360万ドル

ベトナムの高速道路は、先進国並みの建設費用が掛かっていることがわかります。

またベトナムではハノイからホーチミンまでを繋ぐ南北高速道路(1,372km)が計画をされていますが建設省の見積上は、1kmあたり950万ドルで投資計画庁の話では、総投資額312兆5000億ドン(140億ドル)であり1kmあたり1,012万ドルになります。

ベトナムの高速道路から見た周辺。湿地帯や民家もまばらな原野が広がり遠くにホーチミンの高層ビルが見える

役所によってもどう見積もるかで金額が異なっている様ですがフルブライト大学のNhuong氏の見積もりでは、もっと厳しく見ており橋や建設や土地整理費を除いた金額でも1kmあたり1,200万ドルかかる見込みで、同様の条件で計算すると中国の場合1kmあたり500万ドル、アメリカの場合1kmあたり3~400万ドルとなりベトナムの建設費用は他国よりも2~4倍高いことがわかります。なお、値段が高いからといって、その品質は他国よりも高いものではないとのこと・・・

4.なぜベトナムの高速道路建設費用が高いのか?

ベトナムのエリアによっては、山岳地帯があり多くの河川をまたぐ橋が必要であることや、湿地帯など地盤が軟弱である故、建設費が高くなるといったその国土の地形上どうしようもない点がありますが、土木工事の作業員の人件費がはるかに安い国において先進国並みに建設費となる(ベトナム特有の)理由として考えられるのは、

(1)土地収用費用の高さ
経済成長よりも先に土地の値段が大幅に上がってしまった為、用地買収に多額のお金がかかる。
一方で中国の様に短期間に廉価で強制的に土地を収用することも難しい状況である。
またインフラ整備計画の実行が遅く、時間が経つうちに計画時よりも地価が上がって収用コストが膨らんでいる。
高速道路の土地とは異なりますが、最初に上げた陸上輸送の記事においても、コンテナなどを置く物流に必要な土地の利用料は、4~10倍に高騰してていると報じられています。

(2)汚職や賄賂
汚職に関連する費用は総工費全体の30%?とも言われており、こういったお金が費用として最終的に上乗せされていくことで、建設費用が巨額になっているようです。

また最初に上げた陸上輸送の記事でもHaiphong transport companyの代表Mr.Tien氏によると、『ベトナム特有の”領収書の無い、非公式費用”を取り除けば、各種インフラ利用料など20~30%のトータルコストを削減できるはず』と書かれておりこの問題は、ベトナム社会全体としてかなり根深いことがわかります。

カンボジアやタイなどへも繋がる南部経済回廊を支えるコンテナ車

以上を長くなりましたが簡単にまとめるなら、
地形的な理由に加え整備実行の遅れ、土地高騰、賄賂によって高速道路の建設費が巨額になった
それを高金利で借金して作ったので高速道路代を安くできないし、現状でも大赤字なので次の投資(道路網の整備)も進まない
結果、ベトナム国内の陸路輸送費用の方が国外への海上輸送費用よりも高くなったりと経済成長へも悪影響
ということになります。

今回は高速道路を取り上げましたが都市鉄道や空港といった各種インフラ整備においても、同じような理由で経済成長の足を引っ張っていると考えられ、この辺をどう解決していくのかが今後のベトナムの経済成長において鍵を握るのではないでしょうか?

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