ホーチミン市における食品の安全性を確保するため、スマホアプリを活用した豚肉のトレーサビリティが先行して始まったと「tuoitre」や「THE GIOI VI TINH」にて報じられました。

21企業と1,000の生産畜産家が参加。ホーチミンで消費される豚肉の100%をトレーサビリティできるようにすることが近い将来可能になります。

そもそも食品のトレーサビリティとは?

食品の安全性確保のため、飼育や栽培から加工/製造といった流通過程を明確にし、健康に影響を与える事故等が発生・発覚した際においても、問題のある食品の場所や流通経路などを調べることができるようにすることで、日本でも食の安全性への関心から対応している食品や企業があります。(日本の農林水産省ホームページより

なぜベトナムで食品のトレーサビリティが必要なのか?

ベトナムでも食品の安全性について関心が高まっており、ホーチミンにおける街中ではオーガニック食材を扱う専門のお店を見かけることもあります。関心が高まった背景としては、

(1)都市部で所得向上に伴って食品の安さより安全性や美味しさに関心を持つ人が増えた。(安全性に対してお金をかけても良い層が出てきた)

(2)日本と異なって隣国と陸路で繋がっておりホーチミンで言えば、車で一般道を2時間も走ればカンボジア国境という近さである。その為、運送時間やコストの安さからベトナムにも中国産の食品が大量に入ってきて、残留農薬問題、添加物への懸念、産地偽装(中国産なのにベトナム産やアメリカ産と偽装する事件)などが過去発生したから。

という2点があげられます。

ベトナムでは、どうやって実現するのか?

QRコードを活用し、それぞれの段階でスマホアプリを使ってスキャンして読み込んでいく事で、サーバ上に経路の記録を残して最終的に消費者においても確認できるようにする流れです。(データの保管期間は、5~10年)。アプリは、Android、iPhoneそれぞれに対応。

アプリは、Te-foodという名称で、ホーチミン市工商局の指導の下に作られたとあります。このプロジェクト自体、民間主導というよりも役所が旗を振って進めて行っているため多くの企業が最初から参加したのでしょう。トレーサビリティの流れは、以下の動画にまとまっており、ベトナム語ですがアニメーションなので言葉がわからなくても流れを理解することができます。

2016年12月16日からシステムの配置や個々の豚への識別ナンバー(QRコード等)取り付けが始まって、来年2017年5月3日より公式にホーチミン(の小売り店舗?)でも始まるとのこと。

最初の段階では、畜産場を出たところから畜殺場や卸を経てスーパーなどの小売店までを追跡できるようにするとのことですが、さらに将来的には、豚の誕生・生育から消費されるところまで追跡できるようになり、豚でうまくいけば家禽類(鶏など)や野菜、その他食品でも追跡できるようになる見込みです。

トレーサビリティ参加企業からわかるホーチミンの流通市場

ちなみにこの試みには、計11か所の畜殺場も参加しており、その処理可能数からどのくらいの豚肉が毎日消費されているのかがわかります。(別の記事では15か所の畜殺場とあり記事によって数が異なります)

ホーチミンの2ヶ所で1日4~5,000頭(ホーチミン消費量の50%)、周辺のドンナイ省の3か所で1日4~5,000頭、周辺のロンアン省の5か所で1日2~2,500頭、周辺のビンズン省の1か所で1日2~300頭が対応する見込みとあり、これらの合計1万頭近くがホーチミン圏における1日の豚肉消費量と推測されます。

さらに多くの卸や小売りも参加しており
■大手スーパーマーケット5社(計59店舗)
Co-op Mart (34店舗)、Satramart (2店舗)、Big C (8店舗)、Aeon (2店舗)、AeonCitimart (13店舗)
■急速に店舗を増やしつつあるコンビニエンスストア4チェーン(計96店舗)
Food Co-op、Satrafood、Sagrifood、Vissan
⇒ホーチミンで目にするファミマやミニストップなどの名前が無いのは、さすがに豚の生肉を扱っていないからでしょうか
■大手加工食品会社
Vissan、CP
■市中における豚肉の80%超を扱う大手卸市場
Hoc Mon、Binh Dien
■伝統的な大規模市場
Ben Thanh、 An Dong、Hoa Binh、Thai Binhに加えて複数の市場

といった企業やブランドが、現在のホーチミンにおける豚肉流通の主要プレイヤーであることがわかります。

両極端が併存する現在のベトナム

常夏の外気温の中、天井から肉を吊るして台の上で切った肉を、冷蔵設備の無いまま路上の屋台において長時間かけて売られている(当然ハエが沢山たかっていて、足元を見ればネズミも跋扈・・・)。

ベトナム最大の経済都市ホーチミンでも、こういった”昔ながらの市場”がまだあちこちに存在しますが、その一方、日本同様にスーパーできれいにパック詰めされた肉も売られており、さらに今回書いたスマホも活用したIoT(食品のトレーサビリティ)までもが始まります。

日本で何十年もかけて歩んできた流通形態と異なり、こういった両極端が併存している(消費者においても安さを求める層と、安全性や快適性にお金を払う層がそれぞれ存在する)のが、急激に成長しているベトナムの魅力/面白さの1つでもあります。

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