戸籍謄本をAI-OCRで読み取り「相続関係を明らかにする系図」を自動生成するアプリケーション「らくらく相続図」(COLORS社)。一見すると難易度が高いと考えられる戸籍謄本からのDX、いわゆるAgeTechサービス(ITプロダクト)はどのようにして作られたのか?
開発にあたって注意した点、開発スピードを上げるため工夫したことなど、今回の開発だけでなく、今後新たにITサービスを作る際にも重要となる3つのポイントについて紹介します。
目次
■1. プロダクトオーナーの「想い」について理解
VitalifyAsiaでは、お客様から開発依頼を受けて我々が何か開発する際には、まずその開発したいプロダクトに対してのお客様=プロダクトオーナーの「想い」を確認します。
今回なぜ、そのプロダクトを作ろうと考えたのか、それまでの経緯や現在の課題、これを作ることでどういうことを実現したいのか、どのようにビジネスを成り立たせるのか、将来の展望といった事柄についてお話をして詳細を確認していきます。
では、今回の「らくらく相続図」の場合では、プロダクトオーナーである土地家屋調査士法人COLORS社において、どのような背景や想いがあったのでしょうか?
1-1. 社会背景と想い
持ち主不明の空き家(不動産)が社会問題となっていることを昨今ニュースなどで耳にしますが、今後も高齢化の進展に伴い不動産の相続手続きが増えていくことが予想されています。
また法改正に伴い2024年4月から相続登記が義務化されるといった流れもあり、またその手続きの際、被相続人と相続人の関係性を証明する必要があります。
証明にあたっては「法定相続情報証明」という書類を用意することで、各機関での手続きがスムーズに実施できます。
しかしその作成にあたっては、戸籍謄本を読み解いて人手で作成を行うため間違えが発生しやすいことや、作成作業の習熟までに時間がかかるため作成者も簡単には増やせないといった問題がありました。
作成プロセスをデジタル化することで業務効率を上げたい、それにより法改正に伴う不動産登記手続き依頼増加を受託して事業拡大につなげたい 。これがプロダクトオーナー(お客様)の想いです。
1.2 お客様のビジネスを理解する
想いを確認・把握した後に必要なのは、それを整理して要件としてまとめていく工程です。
与件整理・要件定義と呼ばれる工程では、過去に同様の経験があるPM人材(ホーチミン拠点には、複数の日本人が常駐)が入って実施しています。
その際に重要なのは、お客様のビジネス理解です。PM自身が理解しないと要件定義ができないため、戸籍謄本や相続関係図など相続のルールの複雑さや専門用語についてまず勉強しました。
そしてPM自身が理解した後、実際に開発を行うベトナム人エンジニアにも説明しシステム開発にあたって必要な内容を理解してもらう流れです。
■2. 何を開発すると最小の工数で「想い」の実現に繋がるのかを提案
続いてPM人材は、「想い」に対しての共通認識を持ちつつ、それを予算や開発期間などの制約の中で現実的に実現可能な形へと落とし込んでいきます。
最初から全ての機能を盛り込んでしまうと初期開発費用が膨大となり、且つ開発期間も非常に長くかかってしまうことになります。そこで以下の様な工夫を行いました。
2.1 機能の優先順位と取捨選択
ユーザーにとって価値の高い機能を優先し、他でカバーできるものや開発工数の大きくユーザーにとっての提供価値がそこまで高くないと考えられるものは、優先度を下げるなどの調整を実施。
2.2 自動化する場所と手動を残す場所の切り分け
開発するシステム(ソフトウェア)だけで全てを自動化しようとせず、人手で対応したほうが効率的と考えられる工程はそれを残すことで、開発工数とサービスとしての価値の最大化の最適なバランスを追求する。
■3. 良いプロダクト(サービス)を作る為なら
他社商品であっても選択
さて今回の開発では、戸籍謄本をスキャンしてそこから文字認識(OCR)を行い、その認識したデータから法定相続情報証明、相関図を作るプロジェクトです。その最初の工程で必要不可欠なのが、文字認識を行うOCRエンジンとなります。
バイタリフィアジアが過去に自社で開発したOCRエンジンには、FirstReaderといった商品があります。しかし戸籍謄本からの読み取りに活用するには、さらに認識精度の改良を加える必要があり、その場合この部分で費用が膨らんでしまうことになります。
自社製品にこだわるよりも良いプロダクトを作りたい。そこで弊社エンジニアチームでは、他社が提供している複数のOCRを使ってみて、どのサービスで戸籍謄本の認識精度が高いのかを比較調査を実施し、精度や予算面で最適と考えられるOCRサービスの選定を行い、今回の製品にはそれを活用しました。
他にも他社サービスも活用することで、工数の削減に繋がった部分があります。
例えば・・・
(1)利用者からの問い合わせ機能
問い合わせとその管理機能を全て1から開発すると大きな工数になることや、サービス開始直後は利用者数が多くないと想定されたため、他社で提供しているサービスを一部活用。
(2)ランディングページ(LP)
有料のテンプレートを活用することで、1から作るよりもデザイン工数と開発工数の削減に繋がることや、テンプレートに沿って文言を用意していくことで掲載内容の検討もしやすいことから、その方法を提案し実施。
以上で説明してきたように、
1. プロダクトオーナーの「想い」について理解
2. 何を開発すると最小の工数で「想い」の実現に繋がるのかを提案
3. 良いプロダクト(サービス)を作る為なら他社商品であっても選択
の3つがユーザーに価値提供できるプロダクトの迅速な開発にあたって、重要と考えたポイントです。
このようにして開発を実施した「らくらく相続図」。プロダクトオーナーである土地家屋調査士法人COLORS社の感想については、こちらをご覧ください。
■4. AgeTechサービス・プロダクトの開発でもご相談ください
バイタリフィアジアでは、「エンドユーザーに価値を届ける」といった点を重視して日々プロダクトの開発を行っております。開発の特徴としては、
(1)ビジネスを加速させる柔軟性とスピード
(2)開発会社の枠を超えた広範囲な対応力
(3)サービスの成長にコミット
という3点があります。
今回の「らくらく相続図」の開発以外にも、高齢社会に欠かせないヘルスケアIoT機器と連携するソフトウェア開発、介護関係の予約システム開発なども多数手がけており、
高齢社会における問題をデジタルで解決していくAgeTech分野において、
ビジネスパートナーとして開発面から一緒に並走できる会社です。
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