「システム開発でよく聞く請負契約と準委任契約の違いとは?」
「自分の開発に合った契約形態とは一体?」
システム開発を外注する際、耳にする「請負契約」や「準委任契約」といった言葉。契約形態であることは分かる一方、実際どんなイメージかよく分からない…という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、システム開発における請負契約と準委任契約の違いとはなにか?を解説。それぞれの開発契約形態について理解が深まる内容を紹介していきます。
システム開発を外注する場合は契約形態の話は避けて通れません。
本記事を読むことで自社に合う開発形態はどれか?選ぶ視点も身に付きます。ぜひ最後までご一読ください。
目次
1. システム開発における請負契約とは
請負契約とは、受注側が仕事の完成を約束し発注側がその対価として報酬を支払うことを約束する契約形態です。
これをシステム開発に置き換えると、システム開発会社(受注側)が開発業務の完成を約束し、システム開発を依頼した会社(発注側)が報酬の支払いを約束することとなります。
例えば、請負契約でゲームアプリを作ってほしいという依頼をA会社にした場合は、A会社はゲームアプリを完成させることを約束し、完成したゲームアプリに対し発注側が報酬を約束するイメージとなります(※イメージです)。
2. 請負契約の特徴
そして請負契約の特徴としては、大きく4つあります。
2-1. 仕事の結果(完成すること)がカギになる
請負契約の特徴1つめは、仕事の結果(完成すること)がカギになることです。
これは民法第623条で定められている請負の定義「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」にある通り、請負契約では「仕事の結果(完成)」が基準になります。
例えば「〇年〇月までに○○通りの仕様や品質の成果物を完成させること」を契約した場合は、受注側は契約内容通りの成果物を指定された期日までに納品する義務が発生。
この場合「〇年〇月までに○○通りの仕様や品質の成果物を完成させること」がゴールであり、万が一このゴールが成し遂げられない場合は報酬は発生しないことになります。
2-2. 納品された成果物に対し報酬が支払われる
請負契約の特徴2つめは、納品された成果物に対して報酬が支払われることです。
請負契約は「仕事の結果(完成)」を前提とした契約形態のため、報酬が支払われるタイミングも成果物が納品されたタイミングとなります。
2-3. 発注側が仕事の方法を指定できない
請負契約の特徴3つめは、発注側が仕事の方法を指定できないことです。
請負契約は基本的に、発注側が受注側に仕事の方法を指示することはできず、成果物を作る過程は受注側に一任されるようになっています。
2-4. ウォーターフォール型開発が用いられることが多い
請負契約の特徴4つめは、ウォーターフォール型開発が用いられることが多いことです。
ウォーターフォール型開発とは、初期に多くの時間を費やした後、設計→実装→テスト→納品まで、前の工程に戻ることなく順番に進んでいく開発手法です。請負契約の場合は、最初に定めた仕様や品質で成果物が作られる契約形態のため、工程通りに進んでいくウォーターフォール型開発が用いられることが多くなっています。
3. システム開発における請負契約のメリット
「請負契約を結ぶことにどんなメリットがあるのか?」
本章で解説していきます。
3-1. 請負契約のメリット①求める成果物を手に入れやすい
請負契約のメリット1つめは、発注側が求める成果物を手に入れやすいことです。
請負契約は、仕事の結果(完成)を取り決める契約です。そのため、あらかじめ決めた契約通りの成果物を手に入れることができます。万が一、契約通りの内容で進まなかった場合は受注者側に修正を依頼することも可能です。仕事の結果、成果物のクオリティを担保できるため依頼者側は求めたものを手に入れやすくなります。
3-2. 請負契約のメリット②自社リソースに余裕が生まれる
請負契約のメリット2つめは、自社リソースに余裕が生まれることです。
請負契約は、契約通りの成果物が納品される契約です。成果物の製作にかかる作業(成果物が納品されるまでの間のプロジェクト管理や労働時間、人材手配など)は受注者側が担うため依頼者側は開発にかける人材費を削減できるようになります。
開発業務を自社で行う場合は開発プロジェクトの進行管理を逐一行う必要があるため、自社リソース圧迫につながる恐れもあります。しかし、請負契約であれば成果物の製作に関する諸業務を受注側に任せることができるため、結果として自社リソースに余裕が生まれメリットを享受することが可能です。
4. システム開発における請負契約のデメリット
「一方、請負契約にはどんなデメリットがあるのか?」
メリットがある一方、請負契約にはデメリットも存在します。デメリットを知らないと後々後悔することにもつながりかねません。しっかり確認しておきましょう。
4-1. 契約後の仕様変更ができない
請負契約のデメリット1つめは、契約後の仕様変更ができないことです。
請負契約の場合、契約を交わす時点で「この開発ではどんな仕様のシステムをつくるのか?」細かい企画・要件定義を行います。この時定めた内容を途中で変更することは契約上できないようになっています。
例えば発注後に「この機能を追加したい」「もっと別の仕様に変更したい」と思ったとしても契約上、途中から変更・修正することは不可能です。
請負契約はあくまで、契約時に決めた内容を成果物として納品する契約です。契約後に変えたいと思ったとしても契約形態上難しいことをデメリットとして押さえておくようにしましょう。
4-2. 自社にスキルが溜まりづらい
請負契約のデメリット2つめは、自社にスキルが溜まりづらいことです。
これは自社に開発部隊がある上で外注する場合に起こりやすいことですが、開発を外部に委託するという請負契約の特性上、自社スキルが溜まりづらくなります。
例えば、開発に直接関わるエンジニア業務だったり開発を円滑に進めるプロジェクトマネジメント業務だったり、開発を進める中でスキル・ノウハウを身に着けられるフェーズはいくつも存在します。しかし請負契約の場合は、成果物ができあがるまでの工程を受注側に一任する必要があるため、自社で開発をした場合に得られるはずだったスキル・ノウハウは身につかないでしょう。
DX推進が謳われている昨今では、自社のエンジニアスキルを伸ばすことはビジネス成長にに直結します。しかし、請負契約で外注する場合は自社にノウハウやスキルを貯めづらくなるため、しっかりデメリットとして押さえておきましょう。
5. システム開発における準委任契約とは
準委任契約とは、受注側が一定期間の開発リソースを担保することを目的とした契約形態です。
発注側の業務の一部を依頼する形となるため、準委任契約を結んでいる期間内に限り受注側が稼動します。
例えば、〇〇日までにゲームアプリを開発したいという依頼をA会社にした場合は、A会社は準委任契約で定められた期間に限りゲームアプリ開発にあたる業務を依頼通り遂行するといったイメージです。そのため報酬に関しても、契約期間内の業務に対して支払われます。
成果物を完成させることに対する契約ではなく、あくまで技術力の提供やリソースの提供が基準となる契約形態です。
6. 準委任契約の特徴
そして、準委任契約の特徴としては大きく3つあります。
6-1. 契約を結んだ期間内の業務
準委任契約の特徴1つめは、契約を結んだ期間内の業務が基本になることです。
これは民法656条「準委任契約は、法律行為となる事務処理以外の業務の遂行を目的に対価が支払われる契約です」にあるように準委任契約は、成果物単位ではなく期間内での業務が基本となる契約形態です。自社で賄えない開発業務の一部を外注する、リソース不足のため一定期間だけ外注するなど、様々なケースはありますが、契約の範囲が請負契約とは異なっています。
6-2. 業務の実施に対し対価が支払われる
準委任契約の特徴2つめは、基本的には業務の実施に対し対価が支払われるようになっていることです。
これは民法648条2項「受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。」にあるように、システムの結果(完成)は報酬請求の要件にはあたらず、”行われた業務”に焦点があたり対価が支払われるようになっています。
6-3. エンジニアの人月単価がメインになる
準委任契約の特徴3つめは、エンジニアの人月単価がメインになっていることです。
人月単価とは1ヵ月に稼働したときのエンジニア1人あたりの単価のことです。計算方法としては「開発にあたる人員数×1人あたりの作業期間(契約期間)」で求めることができます。
準委任契約の場合は完成した成果物に対する報酬ではなく、この人月単価がメインでの報酬となります。
7. システム開発における準委任契約のメリット
「準委任契約を結ぶことにどんなメリットがあるのか?」
本章で解説していきます。
7-1. 準委任契約のメリット①柔軟に仕様変更できる
準委任契約のメリット1つめは、柔軟に仕様変更できることです。
準委任契約は契約を結んだ期間内で業務にあたる契約のため、追加でコストが発生する必要なく柔軟に仕様を変更できます。
開発を進めていくと「この機能を追加したい」「最初はこうだと思っていたがこっちに変更した方がいい」といった、仕様変更を希望する声も多くみられます。準委任契約の場合はこういった変更に対し柔軟に対応可能です。
7-2. 準委任契約のメリット②スモールに開発できること
準委任契約のメリット2つめは、スモールに開発できることです。
スモールな開発というのは、システムやソフトウェア開発を行う際に、小単位で実装→テストを繰り返し短いサイクルで開発を進めていくことを指します(例:アジャイル型開発)。小単位に区切った開発なので、開発中の変更にも柔軟に対応可能です。準委任契約の開発特性上、こういった開発形態をとることができ着実にシステムやソフトウェア開発を行うことができます。
8. 準委任契約におけるデメリット
「一方、準委任契約にはどんなデメリットがあるのか?」
メリットがある一方、準委任契約にはデメリットも存在します。デメリットを知らないと後々後悔することにもつながりかねません。しっかり確認しておきましょう。
8-1. 開発会社側のスキルが大きく関与する
準委任契約のデメリット1つめは、開発会社側のスキルが大きく関与することです。
準委任契約は「成果物を完成させる契約」ではなく「一定期間の開発リソースを借りる」契約です。そのため、開発をスムーズに進めるためには開発会社側のスキルの高さが強く関係してきます。
せっかく開発リソースを借りることにしても、スキルが低い開発会社に依頼してしまうとスケジュールの遅延や開発の修正が発生する恐れもあるため、コストが膨れ上がったりする可能性もあるでしょう。
プロジェクトマネジメントの知見が豊富だったりエンジニアの開発経験が豊富だったり、実績豊富な会社に依頼するのがおすすめです。
8-2. 納期のある開発には注意
準委任契約のデメリット2つめは、納期のある開発には注意が必要なことです。
準委任契約はある一定期間内でリソースの貸し借りが発生する契約のため、成果物の完成有無は関係ありません。そのため、たとえ開発の途中であっても準委任契約が終わればチームは解散することになります。準委任契約を継続(更新)すれば解決できる問題ではありますが、成果物の完成有無と準委任契約は関係ない点、覚えておくとよいでしょう。
9. システム開発における請負契約と準委任契約の違い
「請負契約と準委任契約の違いとは何か?」
これまで解説してきた内容を踏まえ改めてまとめると以下の通りです。
請負契約 | 準委任契約 | |
委託内容 | 仕事の結果(完成) | 業務の遂行 |
成果物の完成 | ある | ない |
指揮系統 | 受託者側で行う(発注者側からは指示不可) | 発注者側で指示を行う |
報酬 | 仕事の結果(完成)に対して支払われる | 業務の遂行に関して支払われる |
途中の仕様変更 | 基本的に不可 | 可能 |
開発手法例 | ウォーターフォール開発型 | アジャイル開発型 |
10. システム開発における請負契約と準委任契約、選ぶのはどっち?
「請負契約と準委任契約、どっちを選べばいいの?」
本章では請負契約と準委任契約のどちらを選べばいいのか?一般的によく言われているパターンを紹介していきます。ぜひ本章を読み、開発手法選びの参考にしてみてください。
10-1. 請負契約が向いているパターン
一般的に請負契約が向いているとされる開発は以下の通りです。
- シンプルな作りの開発・制作
- あらかじめ仕様が完全に決まっている開発・制作
- 途中で仕様変更が起こらない開発・制作 など
請負契約の場合は開発・制作途中での仕様変更が行えず、その時々にあった柔軟な開発を行うことはできません。そのため、仕様がシンプルでスケジュール通りに開発しやすいものが請負契約に適している開発(例えば、Webサイト制作やLP制作、簡易的なシステム開発など)といえます。
請負契約を結ぶ前に「仕様変更が伴わない開発なのか?」確認することが大切です。
10-2. 準委任契約が向いているパターン
一般的に準委任契約が向いているとされる開発は以下の通りです。
- 途中で仕様変更が起こりやすい開発・制作
- 企画内容が固まっていない開発・制作
- 自社で主導権を握りたい開発・制作
- 自社にナレッジを貯めたい開発・制作
- 開発チームの一部だけ外注したい開発・制作
準委任契約の場合は請負開発と異なり、開発・制作途中での仕様変更を柔軟に行うことができます。そのため、開発中にどんなハプニングがあるか分からなかったりスケジュールの遅延が起こる可能性があったり、比較的複雑な開発・制作になりやすいもの(例えば、SNSアプリ開発、医療系アプリなど)が準委任契約に向いているといえます。
準委任契約を結ぶ前に「どのような体制で開発を行いたいか?」確認することが大切です。
11. 開発会社選びのポイント
「開発を外注する場合、どうやって会社を選べばいいの?」
開発を外注する場合、どのように開発会社を選定すればいいのか?開発会社選びのポイントを紹介します。請負契約や準委任契約問わず、注視すべき重要なポイントです。ぜひ押さえておきましょう。
- 自社のニーズとマッチした実績を持っているか?
- 自社が行いたい開発・制作ジャンルを得意としているか?
- 請負、準委任契約ともに開発経験が豊富か?
- コミュニケーションが適切か?
- 日々どんなコミュニケーション体制をとっているか?
- 連絡はとりやすいのか?
- 運用や開発後のサポートはしてくれるのか? など
開発会社を選ぶ際は「実績」「コミュニケーション」「サポート」面をみて、自社が行いたい開発・制作とマッチするのか?意識するようにしましょう。
12. 実績が豊富なおすすめの開発会社とは?
実績が豊富で、密なコミュニケーションや手厚いサポートも行うおすすめの開発会社は本記事も執筆している「株式会社バイタリフィ」です。
バイタリフィは創業よりモバイル制作・開発の事業領域で活躍し、現在はスマートフォンアプリ、Webサービス、システム開発とそれらの保守運用を軸に、AIチャットボット提供、オンラインストレージ共有サービス、SNS運用代行、など様々なものづくりをデザイン・制作・開発・運用までワンストップで手掛けている制作会社です。
最近ではスマートフォン、VR/XR、IoT、AI、Web3と時代の流れとともにその技術やビジネス知見を深めています。また、10年以上に及ぶベトナムでのオフショア開発経験を活かしたサービスも提供中です。各プロジェクトでは日本人PMによる手厚いサポート体制、リーズナブルなコストで日本国内と変わらないクオリティを実現しております。
バイタリフィは、請負契約、準委任契約問わず豊富な実績を保有する開発会社です。開発・制作についての相談ごとがありましたら、お気軽にご相談ください!
13. まとめ
請負契約とは、受注側が仕事の完成を約束し、発注側がその対価として報酬を支払うことを約束する契約形態です。一方、準委任契約とは受注側が一定期間の開発リソースを担保することを目的とした契約形態です。
2つの契約の大きな違いは、成果物の完成があるかないか、仕様変更の柔軟性があるかないかです。それぞれの開発形態ごとにメリットデメリットが存在します。自社にあった開発形態を選ぶようにしましょう!