唯一未来が高確度で見通せる指標「人口」について、『国連のサイトにおいて生産年齢人口と従属人口の比率が出せる』ことがわかったので、ベトナムについて調べて日本と比べてみました。以下の表やグラフは、国連のサイト内データを基にしています。
<2020年12月新着関連記事を公開>
New2020年の人口ピラミッドや出生率、日本の40年前との実質的な豊かさの比較記事はコチラ
ベトナムの人口ボーナスの転換点
15~64歳を生産年齢人口、それ以外の年齢層を従属人口として、まずは従属人口を生産年齢人口で割った比率の数位が以下のグラフです。現役世代で、どのくらいの子供や老人を支えるかというこの比率。100%なら働く世代1人で、老人か子供1人を支えることになり、低いほど社会的な負担が低いことになります。
1970年以降、現時点まで一貫して比率が下がっています。これは、子供の人口比率が減ったことと高齢者の人口比率が増えなかった為です。これは、人口ボーナスとしてベトナムの経済成長に大きな好影響を与えていたことがわかります。
子供の人口比率が下がったのは、主に合計特殊出生率の低下によるもので1970~1975年の6.33から現在の2未満まで下がり、15歳未満が人口に占める比率も1970~1975年の43.8%から現在の23%まで半分近く下がりました。
一方65歳以上の高齢者は人口の5%から6.7%に上がりましたが上がり率はわずかです。
期間 | ベトナムの合計特殊出生率(人) |
1950 - 1955 | 5.40 |
1955 - 1960 | 6.16 |
1960 - 1965 | 6.42 |
1965 - 1970 | 6.46 |
1970 - 1975 | 6.33 |
1975 - 1980 | 5.50 |
1980 - 1985 | 4.60 |
1985 - 1990 | 3.85 |
1990 - 1995 | 3.23 |
1995 - 2000 | 2.25 |
2000 - 2005 | 1.92 |
2005 - 2010 | 1.93 |
2010 - 2015 | 1.96 |
ちなみに、従属人口の比率が高まった1950年から1970年にかけては、合計特殊出生率が5.4から6.46へ逆に上がっている時期になります。ベトナム戦争中であったため、人口を増やす出産が奨励されたのかもしれませんし、生産年齢人口が戦争による犠牲で大きく減った影響もあると思います。(犠牲者数は民間人だけで400万人超と言われています)
生産年齢人口比率の頭打ちと高齢者人口比率の急拡大
しかし現在が最初のグラフにおけるちょうど底に位置しており、今後急速に従属人口比率が急上昇していく事がわかります。その原因は、高齢者の人口比率の拡大にあります。
次のグラフでは、
・0~14歳の子供(従属人口)
・15~64歳の生産年齢人口
・65歳以上の高齢者(従属人口)
それぞれの対人口比率に分けてその推移を出していますが、
ちょうど2017年付近から高齢者比率が以前よりも急拡大する一方、子供の比率が徐々に減り生産年齢人口比率もピーク経て下がり始めることがわかります。これは戦争という特殊事情によるものを除けば、100年に1回の転換点とも言えそうです。
高齢者の人口比率が高くなるのは、経済成長に伴い医療水準や生活水準が上がったことで、ベトナム人が長生きできるようになったからです。これは悪いことではありません。高齢者の数は、数年以内の2025年にも1000万人を突破する見込みです。
ベトナムの65歳以上人口 | |
1950 | 1,036,000 |
1955 | 1,261,000 |
1960 | 1,542,000 |
1965 | 1,884,000 |
1970 | 2,338,000 |
1975 | 2,408,000 |
1980 | 2,898,000 |
1985 | 3,352,000 |
1990 | 3,907,000 |
1995 | 4,462,000 |
2000 | 5,156,000 |
2005 | 5,541,000 |
2010 | 5,784,000 |
2015 | 6,300,000 |
2020 | 7,895,000 |
2025 | 10,300,000 |
2030 | 12,999,000 |
2035 | 15,690,000 |
2040 | 18,415,000 |
2045 | 21,020,000 |
2050 | 23,740,000 |
2055 | 26,551,000 |
2060 | 28,989,000 |
2065 | 29,418,000 |
2070 | 29,265,000 |
2075 | 29,441,000 |
2080 | 29,953,000 |
2085 | 30,386,000 |
2090 | 30,520,000 |
2095 | 30,438,000 |
2100 | 30,349,000 |
日本とベトナムの生産年齢人口比率を比較
では、日本とベトナムを比べてみます。1950年から2050年までの100年間で5年ごと出したのは、この表です。(JPが日本、VNがベトナム、15-64が年齢。各数値は%。)
JP:0-14 | JP:15-64 | JP:65+ | VN:0-14 | VN:15-64 | VN:65+ | |
1950 | 35.40 | 59.70 | 4.90 | 31.90 | 63.90 | 4.20 |
1955 | 33.50 | 61.20 | 5.30 | 35.20 | 60.30 | 4.50 |
1960 | 30.20 | 64.10 | 5.70 | 40.10 | 55.10 | 4.70 |
1965 | 25.80 | 68.00 | 6.30 | 43.70 | 51.30 | 5.00 |
1970 | 24.10 | 68.80 | 7.00 | 43.80 | 50.80 | 5.40 |
1975 | 24.30 | 67.80 | 7.90 | 42.60 | 52.50 | 4.90 |
1980 | 23.60 | 67.40 | 9.00 | 40.90 | 53.80 | 5.30 |
1985 | 21.60 | 68.20 | 10.20 | 39.10 | 55.40 | 5.50 |
1990 | 18.30 | 69.70 | 11.90 | 37.40 | 56.90 | 5.70 |
1995 | 16.00 | 69.60 | 14.40 | 35.60 | 58.50 | 5.90 |
2000 | 14.60 | 68.20 | 17.20 | 31.70 | 61.90 | 6.40 |
2005 | 13.80 | 66.30 | 19.80 | 27.20 | 66.30 | 6.60 |
2010 | 13.30 | 63.80 | 22.90 | 23.70 | 69.80 | 6.50 |
2015 | 12.90 | 60.80 | 26.30 | 23.10 | 70.20 | 6.70 |
2020 | 12.60 | 58.90 | 28.50 | 22.90 | 69.00 | 8.00 |
2025 | 12.40 | 58.20 | 29.40 | 21.90 | 68.00 | 10.10 |
2030 | 12.20 | 57.30 | 30.40 | 20.20 | 67.50 | 12.40 |
2035 | 12.10 | 56.00 | 31.90 | 18.60 | 66.80 | 14.60 |
2040 | 12.20 | 53.60 | 34.20 | 17.70 | 65.50 | 16.80 |
2045 | 12.30 | 52.20 | 35.50 | 17.40 | 63.80 | 18.80 |
2050 | 12.40 | 51.30 | 36.30 | 17.20 | 61.70 | 21.00 |
子供の人口比30%を切るタイミング(青)が日本は1960年~1965年、ベトナムは2000年~2005年
子供の人口比20%を切るタイミング(青)が日本は1985年~1990年、ベトナムは2030年~2035年
生産年齢人口が人口比でピークを迎えるタイミング(赤)が日本は1990年頃、ベトナムは2015年頃
高齢者の人口比7%を超えるタイミング(高齢化社会、緑)が日本は1970年頃、ベトナムは2015年~2020年
高齢者の人口比14%を超えるタイミング(高齢社会、緑)が日本は1990年~1995年頃、ベトナムは2030~2035年頃
高齢者の人口比21%を超えるタイミング(超高齢社会、緑)が日本は2005年~2010頃、ベトナムは2050年頃
グラフにするとこんな感じです。
日本とベトナムは時差40年
このグラフ、実は40年ずらすと実は日本とベトナムがほぼ同じような推移になります。(2025年以降、子供比率の減り方が日本は大きいですが、ベトナムは2017年以降も出生率が変わらないという推計で出しているためで、実際出生率が下がればもっとグラフが近づくと思われます)
以前から日本とベトナムは、ビジネスにおいて時差40年と考えており、日本の戦後が1946年から始まったように、ベトナムの経済開放(ドイモイ)が始まったのは、1986年と40年後です。
もちろん細かいところでは異なります。例えば40年前、日本にはすでに高速鉄道などの社会インフラがありましたがまだベトナムにはありません。一方、40年前には誰も持っていなかったスマホをベトナム人は持ち、各種ネットサービスが欠かせない存在となっているといった違いがあります。
しかし重要なのは、2015~2020の中間である今年2017年あたりを機に、ベトナムは高齢化社会に入る(しかも日本よりも速いペースで高齢化社会から高齢社会へ移行する)という大きな流れで見た未来です。以下、日本を40年ずらした表です。(日本の1950年を1990年に移動。ベトナムはそのまま)
JP:0-14 | JP:15-64 | JP:65+ | VN:0-14 | VN:15-64 | VN:65+ | |
1990 | 35.40 | 59.70 | 4.90 | 37.40 | 56.90 | 5.70 |
1995 | 33.50 | 61.20 | 5.30 | 35.60 | 58.50 | 5.90 |
2000 | 30.20 | 64.10 | 5.70 | 31.70 | 61.90 | 6.40 |
2005 | 25.80 | 68.00 | 6.30 | 27.20 | 66.30 | 6.60 |
2010 | 24.10 | 68.80 | 7.00 | 23.70 | 69.80 | 6.50 |
2015 | 24.30 | 67.80 | 7.90 | 23.10 | 70.20 | 6.70 |
2020 | 23.60 | 67.40 | 9.00 | 22.90 | 69.00 | 8.00 |
2025 | 21.60 | 68.20 | 10.20 | 21.90 | 68.00 | 10.10 |
2030 | 18.30 | 69.70 | 11.90 | 20.20 | 67.50 | 12.40 |
2035 | 16.00 | 69.60 | 14.40 | 18.60 | 66.80 | 14.60 |
2040 | 14.60 | 68.20 | 17.20 | 17.70 | 65.50 | 16.80 |
2045 | 13.80 | 66.30 | 19.80 | 17.40 | 63.80 | 18.80 |
2050 | 13.30 | 63.80 | 22.90 | 17.20 | 61.70 | 21.00 |
今後ベトナムにおいて進出する日本企業にとっての大きなビジネスチャンスの1つは、高齢化を見据えたサービスの展開だと考えています。
それは、高齢者の比率が高まっていくとどんな社会になっていくのか何が必要とされるのか、高齢社会の先進国である日本人/日本企業にとって時差40年間の経験値こそ、アドバンテージになると考えるからです。(もちろんベトナムの環境に合ったローカライズは欠かせません)
<2020年12月新着関連記事を公開>
New2020年の人口ピラミッドや出生率、日本の40年前との実質的な豊かさの比較記事はコチラ
ベトナム国内へのITサービス展開をお考えなら・・・
バイタリフィでは、ベトナム・ホーチミンにて8年以上運営している子会社バイタリフィアジアを通じて現地情報の提供や、ベトナム向けIT・WEBサービス/アプリの開発支援、ローカライズ、テストマーケティングといった進出支援をしております。もちろん日本や他国向けのオフショア開発やアプリ開発も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
==========================================
「業務へのAI導入を検討しているが、何からすれば良いんだろう?」
そんな事業戦略担当者様!
機械学習、ディープラーニングを用いてAIモデルデータを作成。
AIアプリを開発できる『Mobile AI Lab』のお問合わせはこちら