漫画好きの皆さんは、ガールズラブというジャンルを読まれるだろうか?
少女同士の恋愛をテーマにした少女漫画や少女小説のこと。最近では男性にも広くファンがある。
今日紹介するのは
「となりのロボット」
という漫画
(作:西UKO)
すべてのSFファン
すべてのガールズラブファン
そしてAI開発に興味があるすべての人
にオススメしたい一冊だ。
登場するのは
ロボットの女子高生「プラハ」と
人間の女子高生「チカちゃん」。
2人は「チカちゃん」が4歳のときからの友達だけど、
実はお互いに友達とは違う?
「好き」の気持ちを持っていて・・
舞台はおそらく2010年ごろの日本で、
10年後に東京オリンピックを控えている。
作中に登場するAIの技術も、がんばればこれできるんじゃない?
って思えるぐらい「今」の話なのだ。
というのも、
ロボットのAIにどんなアルゴリズムが使われているか
垣間見えるセリフが多くあるのである。
「僕らだってそうだ
プラハはちゃんと人らしく重要度の順位付けを用いて
記憶(データ)を整理できているってことだ」(となりのロボット 27p)
そう。なんか頑張れば作れそうな気がして、ワクワクが止まらない。
このように、
ロボットであり、ヒロインである「プラハ」の心理描写、
もとい10代の女の子を想定したAIの内部処理の描写が
リアルで生々しいのがこの作品の魅力のひとつ。
それでいて、すごくロマンチックな恋物語でもある。
芥川龍之介は『侏儒の言葉』の中で
「恋愛はただ性欲の詩的表現をうけたものである」
といったが、プラハの恋にはそれはあたらないかもしれない。
何しろまず性欲という機能がない(少なくとも作中では言及されていない)。
そして、詩でもない。
ただ、AIの情報処理の様子が
「ありのままに」紹介されているだけなのだから。
プラハに恋する17歳の「チカちゃん」は断言する。
「ヒロちゃんはロボットでしょ
好きとかそういう感情・・・
あるわけないでしょ 」(となりのロボット 78p)
(「ヒロちゃん」は女子高生としてのプラハの名前)
さて、最後に劇中で私がもっとも好きなエピソードを紹介しよう。
プラハを作った「沖島先生」が亡くなるまでのこと。
以下、研究室の奥寺室長のセリフを引用する。
「プラハ
その日が来るまでに
君が自分に必要だと思うものや
機能があったら言いなさいできるだけ用意しよう」(となりのロボット79p)
ロボットであるプラハが、大切な人の喪失を前にして望んだものとはなんだったのか?
それは思わずなるほど・・と思う選択だ。
ぜひ、本作で確かめてほしい。
出典:
・西UKO(2014) 『となりのロボット』秋田書店
(本文に引用しているページ数はRenta!で配信している電子書籍のものです)