3度目のサイレンが鳴る東京。
ゴジラが街を壊し始めた方がまだマシな世界線の中で、
毎日が為す、マイナスのスパイラル。
不甲斐なく、日を追って視界の空は狭くなって、
ふと見上げれば暗い天井。
徒然なるままに日暮らし、退屈に任せ、
うわの空を見上げて考え耽る人も多いかと思います。
あなたが退屈な日々に見る夢想の代わりに、
僕は散文で夢を見ることが出来ます。
77億人がアブダクションによる記憶操作を行われたかのように、
街の歩き方、風の感じ方、空の飛び方を忘れた地球人のように、
イルカもまた海の泳ぎ方を忘れます。
地元長崎でイルカウォッチングというツアーを開いていた影響か、
今でもたまにイルカを思い出します。
ライフジャケットを着た観光客を乗せて、
イルカを見るために沖合いに出る、地元唯一の観光イベントです。
有明海の入り口に位置する地元には、
約400頭の野生のイルカが生息していました。
僕らからすれば、港で遊んでたらイルカが見えるくらい、
そのくらい身近な存在でした。
まず初めに、
中学校入学、理科室に置いてあったホルマリン漬けのイルカ。
生徒の視線を集めたのは初回だけ。
授業に使われるわけでもなく、
理科室という雰囲気を作り出すためのオブジェクトにされていました。
続いて、
中学2年の修学旅行、沖縄にて、美ら海水族館のショーで観たイルカ。
観客の前で華やかに踊るイルカたちは、
群れを作って泳ぐ野生のイルカとは異なり芸を身につけています。
最後に、
中学3年、海岸沿いに転がるイルカの死体。
群れを見失ったイルカは、
仲間を探して彷徨い、
浅瀬まで来て海岸に打ち上げられて、
死にます。
常人では耐えきれぬ異臭ですが気にも留めず、
あの瞬間を思い出すだけで僕はガキに戻れる。
どう生きれば、どう死ねるかは知らないけど、
少なくとも水族館のイルカは海岸で死なない。
生き方を選べるはずの人間が、
ある瞬間から自分勝手にエポックを画して、
生き方も、死に方も制限されたと勘違いしたのなら、
コロナウイルス感染症、
正式名称「COVID-19」の発生と同時に、
あなたは下記記載の非感染症を患っています。
人の形をした宿痾の病名は、
「別のことをやるために生まれたはずの人間」
正式名称
「やればできるはずの人間」
処方箋は出ませんが、お大事に。