どうも石川です。
今回は最近見て非常に感動した映画をご紹介します。
ご紹介する映画は「はじまりのみち」です。
監督は原恵一さん、主演は加瀬亮さんです。
ストーリーは実在した映画監督の木下惠介が母をのせて人力車で山を越えるという、
話だけ聞くととても地味な話です。
実際、映画を見ても地味という印象は消えません。
戦時中の話ではありますが、派手な戦闘や壮絶な死などは描かれません。
ただ淡々と木下惠介が自分の母を人力車で運ぶ話です。
しかしそれがとても感動的なんです。
告白すると僕は中盤くらいからずっと泣いていました。
涙が止まりませんでした。
映画の冒頭、木下惠介が松竹をやめるところから始まります。
木下が監督した「陸軍」のラストシーンで戦地に赴く息子を見送る母親の姿が
女々しいと言われ、次回作の制作がキャンセルになったためです。
第二次大戦の真っ只中だった当時、政府は戦争礼賛のプロパガンダ映画を作るように
映画会社に求めていました。
映画の中盤、木下と人力車で母を運ぶために頼んだ便利屋が
河原で話をするシーンがあります。
木下が監督であることを知らない便利屋は「陸軍」の話を始め、
「陸軍」のラストシーンがスクリーンに映ります。
便利屋は良いラストシーンだった、あんな映画がまた見たいと言います。
その言葉を聞いて木下は涙します。
その時、はたと僕は気づきました。
陸軍における子は木下であり、母は木下の母を投影したものだったのです。
この映画は木下の母への愛と母から木下への愛を映画にしたものなのです。
だからこそラストシーンを女々しいと言われた木下は怒り、
映画会社を辞めてしまったのです。
そして松竹を辞めて、途方に暮れる木下を便利屋の何気ない一言が救うのです。
この映画で描かれるのは親子の愛であり、映画への愛であり、
そして木下映画への愛です。
監督の原恵一さんは代表作にはクレヨンしんちゃんの
映画シリーズ「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」や
「カラフル」があります。
もともとアニメをやっていた監督で今回は初の実写作品です。
この映画の中で木下作品をそのまま引用するシーンがあります。
映画全体の長さが96分あり、そのうち10分以上が引用された映像です。
これについて賛否があるかもしれませんが、僕は完全な賛です。
引用の中には今回の映画の中に出てきたいろんな要素が木下作品に溢れています。
女教師とその生徒たち、カレーライスを食べる男、母を運ぶ男・・・
木下作品が持つ魅力をそのまま観客に届けたいという監督の意思は
素晴らしいと思いました。
都内では上映しているところも少なくなっていますが、
まだ劇場で観ることが出来るようです。
ぜひ映画館で観てください。おすすめです。