どうも、佐々木です。いつになくまじめなタイトルですね。
最近巷で話題のMastodon(マストドン)についてちょっと書いてみようと思います。
突如現れた分散型SNS、マストドンとは
クラウドファンディングで集まった資金をもとに開発された、Twitterによく似たSNSです。
普通のSNSと違うところとしては、
・オンプレミス
・分散型
という点です。
オンプレミス
例えばTwitterでいうと、Twitter社がサービスを提供しており、そのほかの一般ユーザーはTwitter社と契約(アカウントを取得)してサービスを利用するスタイルでした。
しかしマストドンはオープンソースとしてSNSそのものを配布しており、サーバーに好きにインストールして利用することが可能となります。このマストドンがインストールされたサーバーを「インスタンス」と呼びます。
なので、ユーザーは自分でインスタンスを立ててアカウントを作成するか、誰かが立てたインスタンスを利用してアカウントを作成します。
分散型
これは、ちょうどビットコインなどに似ているかもしれません。
個々が立てたインスタンスは相互に連結される仕組みをとなっており、単一のサーバーにサービス継続そのものが依存することはありません。
例えば、インスタンスAが負荷集中によってダウンしても、ほかのインスタンスは動き続けているのでマストドンというサービスそのものは問題なく継続します。
これらの特徴があることで何が起きるか
上記の
・オンプレミス
・分散型
という特徴が合わさることで何が起きるのかという話ですが、一言でいえば「中央政府がない」SNSが出来上がるということです。
Twitterでは、ある意味Twitter社が政府です。法律(利用規約)を定めているのはTwitter社ですし、その気になれば国外追放(アカウント停止)も可能です。
そういうマストドンコミュニティそのものを司る中央政府が存在しないのが特徴です。
(インスタンス管理者は、自分の管理しているインスタンスの範疇のみで同様のことを行うことは可能です)
つまり、中央政府がないので、善良な(各インスタンスの)管理者の注意を以ってして相互に交渉や管理をしていくことでコミュニティの健全性が保たれていくという状況になるわけです。
現状のインスタンス状況
mstdn.jp
日本で最初の大きなインスタンスは、大学院生のぬるかる氏が立ち上げたmstdn.jpです。
想像以上のトラフィックになったこともあり、サーバーのリプレースなどで2度データが完全消失しています(今はかなり安定している)。
もともと大学院生が趣味で立ち上げたインスタンスに突然とんでもない数の流入があったというだけで、本来マストドンの日本を代表するサーバーとかそういうのではありません(mstdn.jpというドメインでそう勘違いしてしまう人もいますが)。
あれよあれよと登録人数世界最多(現在はpawoo.net抜かれている)に躍り出たmstdn.jpですが、そのあまりの規模から個人での運営が難しくなってしまいました。
そこで、さくらインターネットが名乗りを上げ、サーバー費用のサポートをすることに。
そして移転が行われ、一気に安定感を増したmstdn.jpですが、インスタンス運営が学業の時間を圧迫するほどのものとなっていたぬるかる氏は、休学してmstdn.jpの運営をするかどうかという決断をすることになります。
が、そこでドワンゴがコンテンツ管理のサポートを約束して、まさかの社員として雇用することに。大学を休学という状態にして、晴れてドワンゴに入社し、今はドワンゴの社員としてmstdn.jpを運営しています。
pawoo.net
現時点で世界最大のインスタンスです。
pixivが運営しているインスタンスで、なんと専用アプリもあります。
いろいろと挑戦的な試みを行っており、例えば指定した時間で消える投稿が書ける機能を独自実装していたりします。
また、pixivアカウントとpawoo.netアカウントの連携ができるようになっているので、イラストレーターさんが自分の公式アカウントとして運営することができることが大きな特徴です。
このインスタンスは世界中で物議を醸していて、日本の萌え文化投稿が、倫理的によくないといわれている国のインスタンスにもつながってしまうとして、どのようにその文化的な問題を解決すべきか、という議論がGitHub上で行われたりしました。
friends.nico
ニコニコ動画を運営しているドワンゴが運営しているインスタンスです。
そう、ぬるかる氏がドワンゴに入社しましたが、それとは別にドワンゴは独自にインスタンスを持っています(現時点では統合する予定はないそうです)。
ここも、独自カスタマイズを施していて、お気に入りボタンが「ニコる」ボタンなるものにカスタマイズされていたりします。
徐々に勢いを増しておりますが、比較的おっとりとした空気が流れているインスタンスです。
そのほか
その他にも、無数のインスタンスがあり、非常に面白いです。
例えば、数式をLaTeXと同じ構文で書くことができる”Math”todonなどが有名になりましたが、そのほかもたくさんあります。
共通の趣味を持った人を集めた特化型のインスタンスもたくさんあります。
マストドン珍事件
そんなマストドンですが、まだ黎明期ということもあり、各々が探り探り楽しんでいます。
そんな中で、結構いろんなことがあったので、ご紹介します。
pawoo.net鎖国事件
pawoo.netは、前述のとおりpixivが運営しているということもあり、萌えイラストがあふれかえっており、それを好ましく思わない国だったり、そもそも法律上禁止されている国だったりがあったりします。
それによって、pawoo.netのみを連結から切り離す、という動きが各国のインスタンスに見受けられました。
これに関しては、GitHub内で非常に建設的なやりとり(どうすればpawoo.netと連結をしたまま、不適切なコンテンツだけを省けるのかという議題)が交わされており、例えば人工知能による判断を噛ませたらどうだろう、という意見が提言されたりしました。
日本人多すぎ問題
Twitterは、日本で異常な盛り上がりを見せていたりする、というのはよく聞く話ですが、よく似たシステムのマストドンでも同様のことが起こったようです。
現時点でのインスタンスの規模の上位2つは日本のサーバーです(mstdn.jp / pawoo.net)。
そして、マストドンは連合タイムラインという、世界中の人の投稿が流れる恐ろしく速いタイムラインがあるのですが、そこで日本語の投稿のみがあふれかえったせいで、海外の人が楽しめない、とずいぶん顰蹙を買いました。
現在は、みんななれたのか沈静化したようです。
ジャーナリスト闇に沈み問題
三上洋さん、というITジャーナリストの方がいらっしゃるのですが、最初はおそらくトレンドをつかむため、だと思うのですがかなり初期からマストドンにいらっしゃいました。
ところが、mstdn.jpの持つ独特な空気に毒されたのか、結構「お仕事に支障をきたさないかな……」と心配になるような投稿をたくさんするようになりました。
すっかり今ではみんなと馴染んでいます。あといじられています。
個人的には戸田覚さんにマストドンの空気を体験してほしいなあ、と思います。結構な辛口が飛び出すのかな……。
マストドンをとりまくサービスたち
そんな全世界でムーブメントを起こしているマストドンですが、そのおかげで結構その関連サービスがローンチされました。
マストドンのスマホアプリ
Twitterクライアントが乱立したように、マストドンクライアントも徐々に出てきています。AndroidはTuskyというものが優秀だと思います(佐々木の環境では結構な頻度でクラッシュしますが)。
iOSは使っていないので分かりませんが、大体みんな同じのを使っている気がします(名前はド忘れした)。
また、pawoo.netも専用クライアントを出していますが、ほかのインスタンスでも使用可能です。
今後もどんどんアプリが出てくるのではないでしょうか。
インスタンス構築サービス
マストドンはNode.jsやらReact.JSやらで構成されていて、自分のインスタンスもちょっとサーバーの知識があれば作れるようです。
レンタルサーバーではちょっと難しいですが、クラウドサーバー(料金がとんでもないことになる可能性があるのでお勧めはしません)やVPS(バーチャルプライベートサーバー)を借りることで自分のインスタンスを作ることができます。
が、分からない人や、アップデートするのが面倒な人向けに、ASPとして提供してくれるサービスがあるようです。
ユーロでの支払いになるのでちょっと敷居が高い気がしますが、下手にクラウドサーバーで破産する前にこっち借りた方が賢いです。
アップデートも自動ですしね。
マストドンの課題
そんなマストドン、個人的にはとても大きな課題も同時に抱えていると思っています。
以下に列挙します。
インスタンス管理者の負担大きすぎ問題
インスタンスを運営する人には、時間的/金銭的な負担が重くのしかかってしまいます。
企業などはまだ大丈夫でしょうが、もし仮にmstdn.jp管理者であるぬるかる氏がドワンゴに入社しなかったら、今mstdn.jpが続いているか分かりません。
個人的に思うのは、例えば広告を簡単につけられるようにするなど、インスタンス運営者側が簡単にマネタイズできるようにするようなシステムがあれば、広がるんじゃないかな~と思います。
というか、これが整備されないと持続性のあるサービス提供は無理なんじゃないかなって思うんですよね。
個人情報危ない問題
インスタンスは、メールアドレスとパスワードで登録します(パスワードはさすがにハッシュ化されているでしょうけど……)。
悪意あるインスタンス管理者の場合、もしかするとメールアドレスを悪用するかもしれません。
というか、実際に悪用しようとしていると思われるインスタンスも見つかったりもしました。
こういうところは企業があまり関与していないデメリットですね。
まとめ
課題はありつつ、この形式でのSNSが普及すればとても面白いことになるかもしれません。
最終的にはBitCoinのようにインスタンスなんて立てなくてもユーザーが負荷を分散しあって維持できるシステムができればめちゃくちゃいいですよね。
ちょっとそんな未来に思いをはせたくなるようなSNSのご紹介でした。
ぜひ登録してみてください。