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    ただのシンデレラ・ストーリーにあらず「シンデレラ(2015)」

    どうも、石川です。

    非常に今更ですが、2015年の映画「シンデレラ」を最近のディズニーの流れとあわせて見てみると興味深いので、
    以下、考察をまとめてみました。
    最近のディズニー映画のネタバレが山程あるので見ていない方はご注意ください。

    最近のディズニーはそれまでのいわゆる”シンデレラ”ストーリーを否定し、新たな女性像、ひいては新たな幸せ像を提示することに注力してきたと思います。

    新たな女性像とは今までのただ白馬の王子さまを待っている女性ではなく、男性と同等のパートナーかもしくはそれ以上の存在としての女性です。
    これは20世紀以降の女性の地位向上から、男性を待っているだけの女性というのは現代人の価値観に合わなくなってきたからです。
    これによりディズニーのストーリーもそれまでの異性との恋愛の成就をハッピーエンドとする物語から変化してきました。

    近年で言えば大ヒットした「アナと雪の女王」がそれに当たります。
    「アナと雪の女王」も最初、アナはハンスと恋に落ちて、結婚しようとします。しかしその愛は偽りであったことを知ります(アナ雪のネタバレは大丈夫ですよね…?)
    そこでクリストフが登場します。彼はアナのパートナーとして事態の解決を行おうとし、非常に頼れる信頼出来る存在です。しかし、アナの呪いを解くのはクリストフの愛ではなく、エルサの愛です。
    物語の解決、そしてハッピーエンドは異性愛の成就ではなく、お互いを想い合っていたのに心が通わせられなかった姉妹愛の発露なのです。

    これは他作品でも言えます。塔の上のラプンツェルでは、最後に異性愛の成就はありますが、相手役は旧来的な王子様ではなく、盗賊でお金もなく、喧嘩に弱い存在です。
    そのため女性であるラプンツェルが彼を助けます。
    実写映画としてヒットした「マレフィセント」ではマレフィセントは王様に裏切られ、オーロラ姫に呪いをかけます。
    その呪いを解いたのは王子様のキスではなく、マレフィセントのキスでした。
    マレフィセントではマレフィセントとオーロラ姫の母子の愛が強調されたため、それまでのヒーローだった王子の役割は相当薄められていたものとなりました。

    このように近年のディズニー作品では男性を待っているだけのヒロインではなく、男性と対等な存在としての女性、そして異性愛ではなく、家族の愛がハッピーエンドとなりえました。

    それでは本作、シンデレラを見てます。
    ほとんど皆が知っている通りに話が展開するシンデレラですが、1950年のアニメ版のシンデレラとはいくつか展開の変更や強調された部分があると思います。
    僕が着目したいのは下記の2つです。
    ・シンデレラと王子の出会い
    ・シンデレラの継母の存在

    それでは1つずつ見て行きましょう

    ・シンデレラと王子の出会い
    1950年版ではシンデレラと王子の出会いは舞踏会が初対面でしたが、
    2015年版では舞踏会が行なわる前に狩りをしていた王子とシンデレラは出会います。

    このとき、重要なのはシンデレラは王子が王子であることを知らずに城に仕える兵士か何かと思うことです。
    そして王子もまたシンデレラの素性や名前も知りません。

    これは二人が身分は関係なく惹かれ合っているということの表現と同時に、身分を知らないことで二人は同等の存在として、
    向かい合える存在になっているということも表していると思います。

    王子は王子として特別視しないシンデレラに惹かれます。
    シンデレラは初めから王子と知らなかったからこそ、彼に家では継母と義姉妹に家政婦として扱われ、理解者のいない状況の中、狩りに対する素直な気持ちを伝え、
    自分を理解してくれた王子を好きになるのです。

    ・シンデレラの継母の存在
    継母が悪役であることは1950年版とは変わらないと思いますが、悪役ということ以上に継母の存在自体が強調されていると思います。
    それはなぜかと言えば演じているのはアカデミー賞を二度も受賞した名女優ケイト・ブランシェットだからです。
    途中までコメディタッチに軽く演じられていた継母の最後の独白は彼女の演技力も相まって非常に印象的になっています。

    ここで語られているのは継母の人生ですが、これは女性の地位が低かった時代の生き方とも言えます。
    つまり女性が生きていくためには、経済力のある男性と結婚し、養ってもらうしかなかったということです。
    これはシンデレラ・ストーリーという言葉に代表される、これまでのディズニーが提示してきた女性の生き方、
    そのものではないでしょうか。

    そして自分の人生をさらけ出した継母と対峙したシンデレラが彼女を乗り越えるのはこの物語のクライマックスとなっています。

    ここでもう一つ重要なのは乗り越えた継母にシンデレラは「あなたを許す」と伝えることです。
    継母の生き方は時代を考えれば決して間違っていたものではないでしょう。
    選択肢も与えられず、男性に頼らなければ生きることも出来なかった女性もいるはずです。
    だからこそ、支えてくれる男性を失って、シンデレラにひどい扱いをした彼女を許すのではないかなと思います。

    新しい女性像を提示し、古い女性像を否定するのではないというのがこの映画のバランスではないかなと思います。

    映画は観たまま、感じるままでも楽しめますが、こんな風に物語の裏に隠されたメッセージや意味を読み解くことでより感動が増すこともあります。
    皆さんもぜひ、女性像を変化を気にしてシンデレラや最近のディズニー作品を見てみると新しい発見があるのではないでしょうか。

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